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ごぼうかえるのTOKIの世界!
皆に元気を与えたい! 前向き楽しいブログを目指す(*^.^*) 口蓋裂の娘ちゃんと軽いADHD、軽いチック症状を持つ旦那と楽しくのんびりな日常をドールちゃん達が紹介する! 独自世界の幻想日本神話、自作小説書いています! 神と人形と人間と霊、そして『K』の季節感じる幻想データ世界TOKIの世界へようこそ! 和風SF日本神話の世界です( ´∀`)
流れ時…1ロスト・クロッカー8
ビビッ……ビビッ……
メガネの少女は止まった。
瞳に沢山の電子数字が通り抜ける。
黒い瞳が金色に近い黄色に輝いていた。
「あまの……みなぬし……」
メガネの少女はそうつぶやくとパソコンにもたれかかって寝てしまった。
静かに赤い文字が浮かび上がり点滅する……。
ビビッ……ビビッ……

─エラーが発生しました─

ビビッ……ビビッ……

※※


わあああ!と叫び声が聞こえる。
「何?」
アヤは周りを見回した。
まず目に入ったのは赤い夕陽。
そして沢山の人々がビルに押しかけている光景。
ここちよい風が三人の髪をなでる。
「ここ、さっき君と会った公園だ。雰囲気は違うけど。」
あの美しかった公園は暑苦しいばかりの銀色に変わっていた。
緑はまったくなく、地面にあったタイルは銀色のステンレスのようなものに変わっていた。
まわりには雑草の一本も生えておらず、ビルと銀色の地面を赤い夕陽が照らしていた。
「ここが……未来なのか?」
過去神は不安な顔をアヤに向けた。
「そうみたいね。」
人々は騒ぎ出している。
「偉大な福音さんの思想をなんだと思っているんだ!」
「自然を返して!」
「人間には自然が必要なんだ!」
「燃料を大切に使うべき!」
などと叫びながらビルに向かって何かを投げている。
どうやら大規模なデモ行進らしい。
「福音さんってあの自然共存派の福音さん?」
「そうじゃないかしら?」
「自然……共存派か……。」
三人がビルに向かって叫んでいる沢山の人々を眺めていると苦しそうな顔をしている今と身なりが変わっていない未来神をみつけた。
「やばい、俺がいる!ちょっと隠れてもいいか?」
「待て。」
過去神は鋭い声を出し、この時間軸にいる未来神の後ろ見るよう合図した。
二人が未来神の後ろへと目を持って行くと次の瞬間、驚きの表情になった。
「黒フード!」
黒いローブの男は未来神に声をかけた。
「話かけている。見つからないところへ隠れるぞ。」
「ええ。」
アヤと過去神は公園の門の前にある壁まで走って行った。
「はあ……怖いな。」
未来神も内心冷や汗をかきながら二人を追う。
門を出るとすぐビルがあり、その公園の外側の壁に未来神と黒ローブの男が立っていた。
三人は公園の内側の壁にしゃがみ込んだ。
会話がきれぎれだが聞こえてきた。
「君……か……?」
「そう……。……れ?」
「……は……だよ。」
「……が何の用……」
「忠告…………が時を……………」
「それは……戦争……って事……」
「いや……起こされる……」
「なんで……ことが?」
「これから……女の子が…………んだ。」
「……異種……」
「……アヤって………………で……なんだ。」
「アヤ!」
「知って……?…………歴史が変わった…………は……考えないと……。」
会話はそこで途絶えた。
アヤがそっと壁の向こうをのぞくと先程よりもつらそうな顔をしている未来神しかいなかった。
「アヤが……そんな……」
未来神はそうつぶやくとビルに向かって叫んでいる人々に背を向けるとどこかへ歩いて行ってしまった。
「私の事話していたわね。」
「そうだな。追うか?」
「そうしましょう。私達は会ってもなんの問題もないわけだし、未来神にはここで待っててもらって……。」
「ああ、じゃあ、俺はここにいる。」
とりあえず未来神を公園に置いて過去神とアヤはこの時代の未来神を追った。
すべてが銀で覆われている街を小走りに駆けた。
しばらく歩くと未来神の背中が見えた。
二人は息を飲むと話しかけた。
「あの……湯瀬プラズマさん。」
声を聞いた未来神は足を止め、つらそうな顔をこちらに向けるとうるんだ瞳で睨んだ。
「アヤ……なんでこの時代にいるのかわからないが、君が異種……。君が歴史を動かしたせいで六百年後俺は死ぬほどつらい思いをするんだ……。君がまさかそんな……異種だったなんて。」
「何を言っているの?異種ってさっきの人に言われたの?」
「ごめん。死んでくれ。君がここで現れてくれて良かったよ。ここで君を殺せばこの先の歴史が狂わず済む。」
このあいだのトラウマが蘇る。
未来神は二丁拳銃を取り出した。
二丁拳銃から目を離せないでいると過去神が素早く刀を抜き何かを撃ち落とした。
後からする銃声。
また……撃たれた……
過去神が弾を斬ってくれたおかげでアヤに怪我はなかった。
なんで?だから私が何をしたって言うの?
「過去神白金栄次……なんで彼女を守っているんだ。彼女は異種だぞ。」
「根拠がないだろう。」
「ちっ、君がいなかったらすぐにでも……。まあ、いい。どうせ、のちに現代神とアヤは来るんだ。その時始末する。今は何もしないで退いてあげる。だからさっさとこの時代からいなくなりな。」
未来神はそう言い捨てると背を向け、暗くなりかけている銀色の道を駆けて行った。
「ああ、ちょっと!」
アヤが追いかけようとしたら過去神に止められた。
「やめておけ。あいつを追うよりも黒いあいつを探したほうがいい。黒いあいつはなんだか知らんが情報通でお前の事も何か知っているようだ。」
「……そ、そうね。黒フードをみつけましょう。ありがとう。なんだかわかんないけど助かったわ。」
「ああ。あいつがあそこまで豹変するとはな。」
「異種って何かしら?」
「異種はな……劣化を始めた時の神の事を言うのだ。本来はな。」
過去神は着物を翻してもと来た道を歩み始めた。
「劣化をはじめた時神?」
アヤも過去神の後を追う。
「そうだ。時神の劣化が始まれば時の力がなくなっていくと同時に人の力が流れてくる。その間だけ歴史と時間の能力を両方持つことができるのだ。人の力で身体が満たされたら歳が逆流しその時の神は消滅する。その時の神が消滅したら新しい時の神が現れる。時神はそういう仕組みで動いているんだ。」
「そうなの……不老不死じゃなかったのね。話を戻すけど……私が劣化しているって事なの?私……死ぬの?」
「さあな。俺はお前が何をしていままで生きてきたのか知らないからわからん。そもそもお前は時の神なのか?」
「……違うわ。こないだまで普通の学生だったわよ。」
「そう……なのか。」
二人は先ほどの公園に戻ってきた。
未来神は怯えながら二人に向かって手を振っていた。
デモは先ほどとなんにも変らずに続いている。
「お前に襲われたぞ。」
「俺に?なんでだ?」
「私が異種なんだって。私、でも、こないだまで普通の学生だったのよ?」
アヤは複雑な顔を二人に向けた。
「うーん。よくわかんない。とりあえず、俺がおかしくなったのはあの男のせいだって事はわかったな。じゃあ、過去神がおかしくなったのはいつなんだ?それがわかれば、あの黒いやつ捕まえられるんじゃないか?」
「もう一度……あの辺の時代に戻りましょう。あの黒フードは急に消える事ができるみたいだし待ち伏せしないと捕まらないわよ。」
「そうするか。」
「ここじゃあ、時計を探すのが大変だから一度俺が生きている時代に戻ろう。」
未来神の提案により、三人は一度、二千三百年に戻り、そこからまたあの時計の中に入る事にした。
しかし……
「時計が……ない。」
「なんで?ここにあったじゃない!」
ここはさっき来たばかりの古代博物館。
目の前にあったはずの時計がなくなっていた。
「……。俺達の行動を読んで妨害しているやつがいる……。」
「……そうだわ。三千二百年に戻ったら現代神がいるかもしれない。私、現代神と未来へ行ったのよ。」
「いない確率が高いだろう。現代神は時を渡れる。つまりお前を探しているとすれば、一緒に池に落ちて今頃、源平の時代に飛んでいるだろう。」
「……思い出したよ。」
ふいに未来神が声を発した。
「なんだ?」
「ここには、もう一つ時計があったんだ。まだ公開されていない蔵に入っている時計が……。このフロアにないならまだ蔵の中にあるかもしれない。なんでしまわれているのかはわからないけど行ってみる価値はある。来て!いまなら警備の人も少ないから蔵に入れるよ。」
「あなた、なんでそんなに詳しいの?」
「俺、前、ここでバイトしてたんだ。」
「へえ。」
未来神に連れられ立ち入り禁止の黄色いテープをまたぎ、ひとつの扉の前に行きついた。
床はピカピカに磨かれたタイルが敷き詰められているのにこの扉は古臭い木の扉だった。
「本当に警備いないのね。」
「この時間は外に一人いるだけなんだ。ここはずっと変わらないね。」
そう言うと未来神は扉を開けた。
目の前に古びた和時計が現れた。
展示されていたあの時計にそっくりな時計だった。
「やっぱりあった!ずっとここに入りっぱなしなのか?この時計は……。」
未来神はふうとため息をつく。
「じゃあ……行くわよ。」
アヤは二人の手を掴むともう一つの手で時計を触った。
白い光が三人を包んだ。
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テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

流れ時…1ロスト・クロッカー7
「機械式時計……。」
「これって江戸初期か戦国後期にあったって言われていた時計?」
アヤと未来神は公園から近いところにある古代博物館という名前の博物館にいた。
アヤは服を着替えていた。
赤色のドレスを変形させ、着物っぽくした服を着込んでいる。
この時代ではこれがはやりだそうだ。
見た目よりもかなり動きやすい。
話をもとに戻そう。
「戦国後期に作られた時計らしいぞ。説明にそう書いてある。」
目の前に木製で足の部分がやけに長い時計があった。
「これじゃあ、ちょっと戻り過ぎだわ。二千十年あたりの時計ってないの?」
「うーん……俺、この時代に行ってみたいんだよ。未来には紙と書くものがあれば戻れるんだろ?」
「まあ……そうだけど。……わかったわよ。どこの時間軸で時の神が狂い始めたのか知りたいって部分もあるし……しかたない。この時代に行きましょう。行けるかわかんないけどね。」
「よし!」
ため息をついたアヤとは対照的に未来神の顔は輝いていた。
アヤは未来神を呆れた目で見ながら時計の分析に入った。
「最古の機械式時計って徳川家康がスペイン国王からいただいたっていうのが現存している最古なんだって。その前に天文二十年にフランシスコ・ザビエルが大内義隆に献上したってのもあるし、天正十九年、ローマ法王庁へ派遣された日本少年使節団が帰国した時に、秀吉に献上したヨーロッパの土産の中に時計があったとも言われていたわ。どちらも現存してないはず。」
「詳しいんだね。俺にはよくわからない。」
「この機械式時計って最古の時計だったら東照宮にあるはずよね?ここにあるって事はこの時計は私の時代では発見されていなかった時計なのかしら?」
アヤがまじめな顔で時計とにらめっこをはじめたので未来神はため息をついて言った。
「とりあえずさ、はやく行こう。」
「だから、行けるかわからないわよ。」
「いいから。」
アヤはしぶしぶ未来神の手を掴むと無防備に放置されている時計にそっと手を置いた。
目の前がまた白くなった。


「うまくいったな。」
「また……タイムスリップした?……もう……ほんとに理解できない。」
二人は森の中に立っていた。
鳥のさえずりとなんだかわからない虫が姦しく鳴いている。
なんだか暑い。
どうやら夏に近いようだ。
手をひらひらさせて風を送っていると近くの草むらががさがさとなった。
「何?」
アヤが身構えると着物をきたポニーテールの男が草むらから顔を出した。
「時神過去神!」
草むらから顔を出したのは汗ばんだ顔をした過去神だった。
「お前は……」
過去神も鋭い目を見開き半ば驚いた顔をしていた。
「なんだ?君が過去神?」
未来神はにやりと笑いながら過去神を見つめた。
「お前……未来神か……。」
「そうだ。その髪型はあれなのか?最新のファッションとかなのか?」
「ふぁっしょんとはなんだ?」
「流行だ。」
「お前もこの時代を経験しているだろう。何を馬鹿な事を。」
未来神は過去神のポニーテールをぱさぱさ触りはじめた。
うざったそうに未来神を見た過去神は今度はアヤに話しかけた。
「お前、あれから未来へ飛べたのか?四百年ぶりくらいか。俺の記憶から消えるところだったぞ。」
「……そう……なのよね……。時を渡るって……こういう事よね……。という事は、今は戦国後期くらいって事なの?」
「慶長二十年だ。」
慶長二十年……大阪夏の陣あたりの年号だ。
「やっぱり戦国後期だわ。」
「俺は……人間の作る歴史が嫌いだ。争いばかりで生きた心地がしない。」
「そうなのか?俺は……今はけっこう楽しく生きているけどなあ。」
過去神が未来神を睨んだ。
「お前も俺が生きた時間を生きているのだろう?平気なのか?」
「平気じゃなかったさ。つるんでいた友達も戦争で死んだし。でも、今の俺の時代は平和なんだ。だから、戦争なんて起きてほしくないさ。」
「そうか。」
二人があまりにも次元がかけ離れた会話をしているため、アヤは会話に入れなかった。
「それより……お前達はなんでこの時代に来たんだ?これからまた戦争が起きるんだぞ。」
「ああ……思い出してきたよ。豊臣軍が滅ぶ戦いだね。ずいぶん前の事だったから俺自身忘れていたよ。来たのはただの好奇心さ。」
未来神は暗い顔つきでぼそりとつぶやいた。
どの時の神もいままでの歴史を通ってきているのだ。
嫌な事なんて数えきれないくらいあっただろう。
「一つ聞くわ。過去神、あなたは私を殺したいと思う?」
「いや。だから、お前を殺して俺はなんか得をするのかとだいぶ前にも聞いたような気がするが……。」
「……。じゃあこの時代じゃないんだわ……。あ、あなたは今どこへ行こうとしていたの?」
「俺は……天王寺に行く所だ。」
過去神は目を伏せた。
「そう……。」
つまり、天王寺・岡山の戦いの最中という事だ。
「だが……行くのはやめる事にする。もう……豊臣が勝てるとは思えん。……すまんが……また……聞いてもよいか?」
「何?」
「真田信繁はどうなった?死んだか?」
過去神は苦しそうな顔をしてつぶやいた。
真田信繁とは真田幸村の事だ。
「幸村?君、豊臣軍のやつと仲良かったのか?」
未来神が咄嗟に言葉を出した。
「幸村?信繁の事か?いや……手合せをした程度だ。」
「ああ、そうか。幸村は言い伝えの名か。ふーん、あれか。つまり、君は豊臣の方にはついてなかったんだ。手合せって死闘だったんじゃないか?」
「まあ、そうだな。俺は徳川の方についているからな。」
「いいな。俺は豊臣についたから地獄を見たよ?皆死んだ。あの時は本当に死ぬかと思ったよ。毛利と大野軍が自分の軍の数倍の徳川軍に正面から当たったらしいし。」
未来神は遠い過去を思い出すように語った。
「そうなのか……。それで……信繁は?」
「真田信繁は大阪夏の陣で戦死したって聞いたけど。」
「……つまりこの時代で死ぬのだな?……なるほど人生五十年か……。」
未来神にほとんど語られてしまったのでアヤは予備知識を話すことにした。
「あ、でも、説は色々あるの。信繁は生きていて秀頼と逃げた……とか。」
「そうか。……やつには生きていてほしいところだ。死んだのなら……しかたない事だがな。」
過去神は何かを思い出すように目をつぶると聞いた。
「これからの歴史も荒れるのか?」
「……。人の歴史なんてずっと荒れているさ。」
未来神は言葉を吐き捨てた。
「……もう、知り合いが死ぬのは耐えられない。まあ、どちらにしても俺よりも先に死んでしまうが……。……天王寺に行くよりもここから先の世界を知りたい。俺を未来へ連れて行ってくれないか。お前を殺そうとしている俺も気になるしな。」
過去神は銃声がしきりに聞こええてくる山をじっと見つめながら言った。
「天王寺に行かなくていいの?」
「……ああ。もういい。少し信繁の事が気になっただけだ。」
「そう……。」
少し沈黙があった後、
「ん?」
と、未来神が声を発した。
「どうしたの?」
気がつくと未来神が険しい顔で前を睨んでいる。
「なんだ?敵兵か?」
「違う。」
過去神とアヤも未来神が見ている方向を向いた。
そこにはフードのついている黒いローブのようなものを纏っている男が立っていた。
「……この時代の人間ではないな。」
過去神は目を細めた。
「時神?」
アヤが不思議そうに首をかしげたらその男はローブを翻して走り去ってしまった。
「追おう!」
三人はローブの男の後を走って追いかけた。
「この方面……天王寺?」
黒ローブの男は林の中を疾風の如く走っている。
必死に追いかけてもなぜか追いつかない。
「天王寺だって?俺、天王寺いけないよ!」
未来神が焦った顔で二人を止めたが足は止まらない。
「なんでだ?」
「俺に会っちゃうからさ。この時代の俺に。この時代の俺はたぶん、天王寺で戦っているから。時神は自分に会ってはいけないだろ?その時間軸の未来神に二人未来神が存在すると気がつかれた時どちらかが消滅する。つまり未来神がいなくなるわけだ。どちらかが消えるって事はどちらも自分自身だから両方消滅するって事なんだ。」
「え?そうなの?だから現代神も同じこと言っていたのね。」
「おい、見失った。」
話しながら走っていたせいか黒ローブの男は姿を消していた。
「はあ……しょうがないわ。」
「なんか、ごめん。」
未来神は丁寧に頭を下げた。
「もういい。……あの男は置いておいて一度未来へ連れて行ってくれ。」
過去神は燃え盛っている天王寺方面に向かって舌打ちするとアヤに目を向けた。
「行けるかわからないけど……わかったわ。……あなた、名前なんて言うの?」
「俺は白金栄次。お前は?」
「アヤ。」
「あ、ちなみに俺は湯瀬プラズマな。」
アヤは素早く時計を描くと先程の時間軸よりも少し未来の二千六百年と書いた。
彼らがおかしくなってしまったのはいつからなのかをちゃんと調べたかったからだ。
また目の前が真っ白になった。

テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

流れ時…1ロスト・クロッカー6
朝になり平安京が騒がしかった。まぶしいばかりの太陽だが息は白くとても寒い。
アヤはあまりの騒ぎに飛び起きた。
「な、なに?というかなんで鎧着てるの?」
隣にはなぜか甲冑姿の過去神が座っていた。どうやら一日付き添ってくれたらしい。
「いままで木曽次郎義仲が暴れていたんだ……。征夷大将軍に任命されたからな。それが後白河上皇の作戦だという事も知らずに……。まあ、法住寺を焼き討ちして院を幽閉したのは義仲だから何にも言えんがな。」
過去神は遠くを見るような目でつぶやいた。
「義仲……木曽の義仲……。」
「そうだ。都ももう危ないな。戦がはじまる。」
「戦……。」
そこまで言いかけた時、塀の外から弓矢が飛んできた。
「お前は逃げろ。巻き込まれたらいかんだろう。」
「あなたは?」
「俺は義仲の軍という事でここにいる。敵が来たら戦うまでだ。」
過去神は刀を握りしめた。
「……。」
アヤは複雑だった。
木曽義仲はいずれ近江で討ち死にする。
平家物語で有名なところだ。
塀の中に入ってくる弓矢の数が先程よりも多くなっていた。
近いところで男達の叫び声が聞こえる。
逃げたいのはやまやまだがどこへ逃げればいいかわからない。
「しょうがない。来い。」
「わっ!ちょっ……」
過去神は迷っているアヤの手を掴むと屋敷の外へ飛び出した。
目の前は戦場だった。
馬のいななきと弓が唸る音と刀の響く音と鎧を着た男達の叫びが入り混じっている。
あちらこちらに血まみれの死体が転がっていた。
「ううっ……」
アヤはまた気持ち悪くなり口を手で押さえて必死で吐くのをこらえている。
「やはり……義経と範頼か……。」
「義経って源の九郎義経?」
「そうだ。六男範頼と九男義経。義仲を殺しにきたな……。」
過去神は平然と襲ってきた男達を斬っていく。
血しぶきが上がるが過去神は自分にかからないように斬っているようだ。
アヤは目の前で倒れていく人々に絶句した。
悲鳴もあがらなかった。
人って……こんなに簡単に殺していいの……?
現代とのギャップにアヤは目から涙がこぼれていた。
別に知っている人間ではないが……なんだか悲しかった。
「どうした?怖いか?これだから女は困る。」
「何言っているのよ……。人が……」
「日常茶飯事だ。弱い者は死ぬのが決まりだ。」
「……。もう……いや……。だれか……現代に戻して……」
「……お前……。」
過去神は襲ってくる男達を斬り捨てながらつぶやいた。
「っち……。わかった。来い。」
ぐずっているアヤの手を掴み過去神は走り出した。
「どこいくの……。」
「逃げればいいのだろう?」
アヤの足がガクガクしているのに気がついた過去神は舌打ちをもう一度するとアヤを抱えてまた駆けだした。
襲ってきた義経軍を華麗にかわし、弓を刀で弾きながら馬を探す。
鎧はとても重いので人一人抱えて走るのは大の男でもきつい。
ふと横目で見ると鎧を着た女の人が馬を乗りまわして戦っていた。
「巴……御前……。」
巴は何も言わずこちらをちらりと見ただけで男達の中へ入って行った。
「助かったな。」
「え?」
「彼女が足止めしてくれるそうだ。いまのうちに行くぞ。」
近くで暴れていた馬を落ち着かせ過去神は馬に乗り、前にアヤを乗せた。
そのまま狭い道を風の如く駆けた。
「……聞きたいことがある。」
馬を操りながら過去神は低い声でつぶやいた。
「な、何?」
「お前が知っている歴史を教えてほしい……。」
「……。」
アヤは過去神の言葉にどう答えようか迷い、しばらく黙りこんでいたが我慢できなくなり話しはじめた。
「義経軍の佐藤兄弟が帝をお守りし、義仲軍は京を出て逃げていたの。木曽を目指していたけど逃げ切れないって悟って義仲は巴御前を逃がしたの。その後、近江粟津で雑兵の放った矢で討死。今井兼平も自害したわ。」
「そう……か。」
一瞬、言ったらまずいのではないかという考えもよぎったがどうしても我慢できなかった。
「あなた、歴史……変えないわよね?」
「変えない。というより変えられない。歴史を時の神が動かす事はできない。歴史を動かす管轄なのは人間だ。俺が斬った人間も意識が戻った時にはかすり傷一つしていないだろう。我々時の神は時間を守るだけだ。その他に権限はない。」
アヤはまたわからなくなってきた。
今の過去神の言葉だと戦争などの歴史を違う時間軸に移す事は出来ないらしい。
それに人を殺そうと思っても殺せないようだ。
考えていると過去神がまた口を開いた。
「……俺が……できるかわからんが未来に戻せるようになんとかしてやろう。」
そうだ。とりあえず、今は現代に戻る事を考えよう。
アヤはそっちの方に考えを持って行った。
「ありがとう……私、未来に……飛びたいの。現代にぎりぎり入らない未来へ行って現代の時計をみつけて……あ……でも……その時代に時神がいるかわからないのよね……。」
「時神などどの時代でもいるだろう。時と共にいるのだからな。」
二人は京の都を出て木々が枯れている林の中へ入って行った。
林の中にも死体は転がっていた。
だが、京よりも安全なのは間違いなかった。
過去神は馬を止めるとアヤを地面に降ろした。
「……。ありがとう。あなたがいなかったら私、死んでいたわ。」
「礼は戻れてからにしろ。俺は戻せるかなんて知らんのだからな。」
「……。じゃあ、描くわ。」
アヤは紙とボールペンを出すと時計を描いた。
「ほう、これが時計か。」
「年代は……二千十五年……」
描いた紙を過去神に渡したが何も起こらなかった。
「やはり、無理なようだな。」
「まだ、あきらめないわ。もしかしたらこれはまだ現代っていう管轄なのかもしれない。もう少し時間をずらしてみるわ。」
アヤは内心ドキドキで今度は二千三百年と明記した。
すると過去神に紙を渡してもいないのに紙が光だした。
「え?」
不思議に思う隙すらなかった。
アヤは光に包まれた。


なんでよ!
なんで?
アヤは心でそう思っていた。
さっきの地獄はどうしたのか穏やかな日の光がさしている公園をカップルが通り過ぎて行く。
あきらかに現代ではないが源平の時代でもなかった。
アヤは公園のようなところで一人立っていた。
噴水が日の光できらきらと輝いている。
まわりは高層ビルが立ち並んでいてサラリーマンや子供がたくさん歩いていた。
アヤは少し暑かったので羽織っていた着物を脱いだ。
「ここ……まさか二千三百年の……東京?」
綺麗に手入れされた植木と磨かれたタイルの地面。
大都会の中の憩いの場のようにある公園。
なんで?
なんで私……タイムスリップしたの?
過去神はあの紙に……ふれてもいないのよ?
なんで?
その時、近くで自分をみている目線を感じ取った。
アヤはきょろきょろとあたりを見回す。
一人の男と目が合った。
男はこちらをまっすぐ見つめている。
アヤにはその男が誰なのかわかってしまった。
「……未来神……湯瀬……プラズマ……。」
「あれ?なんで俺の名前知っているの?それよりもその恰好どうしたんだ?」
未来神はあの時の険しい顔ではなくニコニコ笑っていた。
軽い感じでアヤに話しかけてきた。
「……。あなた、私に何か恨みでもあったの?」
「ええ?よく見たら怪我してんじゃないか。どうしたんだい?」
未来神は聞いていないのかアヤを舐めるように見ている。
「あなたが……やったんじゃない……。」
「何?俺が?なんで女の子を傷つけるような事しなければなんないんだ?」
ここでもそうだ。
さっきの過去神といい、私を殺そうとしてこない。
いつからだ……
いつから私は二人の的になった?
まず、なんで殺されそうになっているの?私……。
無性にそれが知りたくなった。
「あなたは歴史を動かす事ってできるの?」
この未来神もアヤに危害を加えなさそうなので質問してみる事にした。
「できない。歴史の管轄は人間じゃないか。歴史をつくるのは人間だよ。俺は時と共に生き、ただ未来を守っているだけさ。」
と、いう事はやはり時の神は起こった出来事を戻すことはできないし、違う時代に飛ばす事もできない。
「つまり……そういう事……」
そう考えると現代神が言っていた事は嘘になる。
現代神は未来神と過去神が時間を狂わせていると言っていた。
しかし、二人には歴史を変える能力はない。
いや、そうとは限らない。
二人が嘘を言っている場合だってあるのだ。
歴史を動かせないと見せかけて現代神を欺き、二人で一気に歴史を動かしたり止めたりしようとしている可能性だってある。
「なあ、どうしたんだ?さっきから福音さんみたいな顔して……。」
「福音さん?」
「あれ?福音さん知らない?最近出てきた議員なんだけどいつも眉寄せて険しい顔している人なんだ。ええと、確か自然共存の精神をひたすら国民に言いかけている人でさあ。」
「へえ。」
こうやって話していると彼には悪っけがまったくない。
「まあ、とりあえず怪我治そう。」
未来神はポケットから液体の入ったビンを取り出した。
「なにそれ……」
液体は青色をしていてなんだか不気味な色を放っている。
「飲みな。ほら。」
「飲みなって……。」
戸惑っているアヤに無理やりビンを押し付けると未来神はにこりと笑った。
「今、はやっている傷薬だ。血小板とか傷口を治す細胞を活性化させてなんかやる薬だ。俺もよくわかんないけど一瞬で治るよ。西条ケレンさんっていう外国の方とのハーフのあの人が発明したっていう……。」
「知らないわ。」
「え?知らない?ははっ、というか君、何時代からきたんだい?その古代の着物といい、コスプレ?それとも君も時神?まあ、俺を時の神だってわかるところからすると時神と考えるのが妥当か?」
「私は人間よ?」
「人間は歴史をつくるのみで時代は渡れないよ。時代を渡れるのは中立の立場を保っている現代神だけさ。」
「……現代神……だけ……。現代神だけの能力……だから過去神は特殊な能力って……」
「そうだ。君、時代を渡ってきたんだろ?じゃあ、現代神だよね?」
「違う……私は勝手にタイムスリップしちゃっただけ。」
アヤの頬を冷や汗が伝う。
私って……なんなの?
現代神がなんかしたのかしら……
そうだ。そうに違いない……。
現代神が私になんかしたんだ。
「ま、いい。とりあえず、それ、飲めよ。」
「……。」
未来神が青い液体を指差す。
彼らは一度アヤを殺そうとしたやつらだ。アヤはどうしてもこの液体が毒にみえてしかたなかった。
「毒……じゃないわよね?」
「毒?毒って時代劇サスペンスとかで出てくる毒を盛るってやつの事?」
「時代劇サスペンス?」
「ほら、今やってるよ。」
未来神はビルの前にデカデカと貼り付けられている薄型超巨大テレビを指差した。
そこでやっていたテレビはアヤの考えている時代劇とは違った。
現代で普通に放送されているサスペンスドラマ……
「これが……?これ、普通のサスペンスドラマじゃない。」
「時代物のサスペンスドラマさ。」
「時代物?これが?」
そこで気がついた。
私はいま、未来に来ているのだと。
そうか……私が生きている時代は過去か……それで時代劇……
アヤが考えにふけっていると未来神が首をかしげて困っていた。
「ああ、ごめんなさい。私からすればここは未来だから。感覚が狂っただけ。」
「ふーん。あ、俺さ、一度過去に行ってみたいんだ。君なら過去に行けるだろう?」
「行けるかわからないわ。いままでだってなんでタイムスリップしたのかわからないんだから。」
「ま、そのことは後で聞くからとりあえず薬飲みな。そのまんまでいたら変な目で見られるよ。」
未来神に言われてまわりの目が気になってきたアヤはどうにでもなれという気持ちでビンの蓋を開けると目をつぶって液を飲み干した。
すると一瞬で皮膚のひきつるような感覚が消えた。
よく見ると擦りむいた膝ももとに戻っていた。
「嘘……。」
「たいした傷じゃなくて良かった。これで大丈夫だ。じゃあ、話を聞こうか。」
「え?あ……うん。」
この時代の人間はこうやって傷を治しているらしい。
アヤはゲームの中などによく出てくる回復アイテムを想像した。
「まず、なんでこの時代に来たんだ?」
「話せば長くなるの……。」
現代神がいきなり現れた事、未来神、過去神に殺されそうになった事などをアヤは簡潔に話した。
「……そうなんだ。それ、俺も気になるな。その話けっこうおかしいんだよな。時神は歴史なんて動かせないし。それに俺は君に異種って言ったのか……。意味わからないね。まあ、まず、君を連れまわした現代神を探そうか。」
「え?一緒に来てくれるの?」
「気になるからさ。一緒に行くよ。」
「一応、お礼言っておくわ。」
二人は現代神を探すため別の時代に行こうと試み、時計を探し始めた。

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流れ時…1ロスト・クロッカー5
ビビッ……ビビッ……

パソコンに向かっていたメガネの少女はキーボードから指を離した。
……あれ……おかしいな?
頭にツクヨミ様の神社が映るのはなんで?

私って……

あの後「プラズマさん」と……。

※※


「おい!しっかりしろ!」
誰かにゆすられている。
あれ?私……どうなったの?生きているの?
アヤはそっと目を開けた。
「娘が傷だらけで池に浮いているなんて尋常ではない。」
アヤに話しかけていたのは男だった。
ん?この男の人……どこかで……
男は平安貴族のような恰好をしていた。
水干袴を着て烏帽子をかぶっている。
「話せるか?何があった?」
しきりにアヤに話しかけている。
「……。あなた……どこかで……」
うつろだった意識がだんだん戻ってきた。
「あなた!」
アヤは驚いて男から離れようとしてよろけて倒れた。
「どうした?大丈夫か?安心しろ。俺は何もしない。」
男はアヤに近づく。
「……何言っているの!時神過去神!あなた……私を殺そうとしたじゃない。」
きょとんとして立っている男は江戸の時代にいた過去神だった。
「なぜ、俺が娘を殺そうとする?お前を殺して俺は何か良い事があるのか?それからなんで俺の事を知っている。」
「え……?」
そういえば、周りの雰囲気がおかしい。
大きな屋敷が連なり、荷物を運んでいる牛が舗装されていない道をゆらゆらと歩いて行く。
過去神と同じような恰好をしている者とみすぼらしい着物を着た者がアヤを気味悪そうにちらりちらりと見ながら通り過ぎて行った。
「とりあえず、止血だけはしたが一応医師にみてもらった方が良い。」
「ここ……どこ?うう!寒いっ!」
よく見るとアヤの口からも過去神の口からも白い息が漏れている。
「都だ。今は冬だ。そんな恰好をしているから寒いのだ。」
過去神の言葉にアヤは眉をひそめた。
「……いつ?」
「寿永三年だ……」
「!」
寿永三年って……源平の時代じゃない!
源平の時代つまり治承・寿永の乱の真っただ中である。
現代神は?
アヤは周りを見回したが現代神の姿はなかった。
「……。どうして?私……タイムスリップしたの?」
「たいむすりっぷとはなんだ?」
「時間を渡る事よ。」
「そうか。お前は時の神なのか?」
「それより、なんであなた生きているの?あの時代から何百年も前なのよ?」
「時神は時と共にいる。お前がどんな時代から来たかは知らんが、時神は神だ。人の物差しではかるな。」
……と、いう事は……彼らは不老不死なのか……
「お前はなぜ時を渡ってきた?」
過去神はあやしむようにアヤを見てきた。
少なくともこの時代の過去神はアヤに危害を加えなさそうだったため、アヤは過去神を刺激しないように話す事にした。
「つまりお前は現代神と時を渡っていたがなぜか一人でこの時代に来てしまったと。」
「そういう事。でもきっと現代神がなんとかしてくれて助かったんだわ。」
「お前、池に落ちたと言っていたな。」
「そうよ。」
「現代神がなんかしたとするならそれだろうな。」
「え?」
「この時代に明確に時間をはかるものはない。この時代は時をはかる方法がたくさんあるのだ。日時計、星をよんで時を知る者、大雑把に日が出ている内は昼、日が沈んだら夜と考える者、そして水で時間を知る水時計……。」
「水……時計……。」
「だが、ただ池に飛び込んだだけでは時は渡れないだろう。水時計はそんな単純なものではない。おそらく色々条件が重なったのだ。……日が沈んだから夜、水時計、池に映った星……。条件ならあるだろう。」
「……なるほど。現代神はそれを見込んで私をこの時代に飛ばして助けてくれたのね。」
「さあな。そんな事本人に聞け。」
過去神の言葉にアヤは気がついた。
現代神が……いない。
現代神と別れた今、現代に戻る術はない。
まずい……
「私……もとの時間に……戻れない……。」
「とりあえず治療する。来い。」
アヤの言葉を半ば無視した過去神は手を掴んだ。
そこでまた新しい考えが浮かんだ。
「あなた、別の時間に行くことはできるの?」
「……?過去神は時間を渡る事はできん。」
「な、なんで?」
「その現代神とやらの能力は特殊なのか?」
「え?」
現代神の能力がどうなのかアヤは知らない。
「……通常はいけんはずだ。」
「で、でも、現代神は未来の時計を描いただけで未来へ飛べたわ。」
「だから、特殊な能力の持ち主なのかと聞いたのだが。」
わからない……
だいたい私は普通の人間だ……時の神の事情なんて知らない。
「だいたいなんであなたは私を殺そうとしたの?」
「知らん。その時代の俺に聞け。」
「そんな……。」
そこでアヤの意識は途切れた。


笛の音が聞こえる。
きれいで優しい音色。
アヤは目が覚めた。
最初に目に入ったのは木で組み上げられた天井だった。
アヤは布団の上に寝かされていた。
「……。気絶……したんだわ……。」
一気に頭の痛くなる事ばかり起こったせいで疲労の事まで考えてなかったらしい。
気絶というより眠ってしまったのだ。
ここは屋敷の中である。
起き上ると木の床と衝立と簾が目に入った。
簾の外はきれいな満月がうっすらと見えていた。
アヤの身体にはさらしのようなものがまかれていて厚手の着物が二、三枚着せられていた。
「……怪我、治療してくれたのかしら……。」
そっと立ち上がり簾の外へ出てみた。
池や手入れされた地面、外は庭のようだった。
目の前に大きな岩がありその上に過去神が笛を吹きながら座っていた。
外は息が白くなるほど寒く、雪がちらちらと舞っている。
「きれいな音色……」
満月と笛を吹く風景は幻想に近いものがあった。
「一応医師にみてもらったが……大丈夫なのか?」
過去神がアヤに気がつき口から笛を放した。
「ええ。もう大丈夫よ。たいした傷じゃないし。」
アヤの顔色をしばらく見ていた過去神は目を閉じて満月の方に顔を向けた。
「……戦の世の中は変わらないのか?未来は……これからの未来も……こんな事ばかり起こるのか?」
アヤからは過去神の顔は見えなかったが声に悲しみがこもっていた。
「……。そうよ。これから人は同じ事を繰り返していくの。」
「……そうか。」
過去神はそれだけ言うとまた笛を吹き始めた。
アヤはなんて反応したらよいかわからず黙って笛の音を聞いていた。

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流れ時…1ロスト・クロッカー4
ビビッ……ビビッ……
またも世界が歪む。
メガネの少女の手はキーボードから離れることなく的確に文字を打つ。
……プラズマは私の中の「お気に入りの神」なの。恋愛要素とか入れたいな……。

※※

「はい。つきましたよ。あれ?どうしました?」
二人はゆらゆら揺れていた。
「……ん……。気持ち……悪い……。」
気がつくと猫の人が心配そうな声で語りかけていた。
そして意識を戻すため二人をゆすっていた。
と、いう事は知らない内に気絶していたらしい。
しがみついたまま気絶するとは……二人はとても器用なのかも知れない。
「うう……。」
二人は青い顔のまま猫の人から降りた。
山のふもとはもう真っ暗だった。
どこからか虫の鳴き声がする。
目の前には大きな屋敷が建っていて、近くに池がありそこに月が映っている。
すごくきれいで静かなところだった。
空には満天の星空と少し欠けた満月がキラキラと輝いていた。
「では。わたくしはこれで。乗ってくださってありがとうございました。」
猫の人は丁寧に頭を下げた。
「あ……いや……別に。ああ、こちらこそありがとうございました。」
現代神とアヤも丁寧に頭を下げた。
猫の人はにこりと笑うと風を巻き上げて消えて行った。
「……さっさと行きましょう。もう……はやく帰りたい。」
まだ青い顔をしているアヤは現代神を促した。
「ああ、まってよお!」
現代神も慌てて目の前に立っている屋敷に向かって歩き出した。
屋敷には門番がいた。
門の前に二人、一人は闘牛のようなツノをはやし、いかにも強そうである。もう一人も鋭い牙と鬣を持っているライオンのような男であった。
「正面からじゃ入れないね。」
「まわりこんで入れそうな所から入るとか。」
屋敷のまわりは壁のようなもので囲われていた。
「壁で囲われているけど、これくらいなら登れそうだね。」
壁はまったく防犯の意味をなしてないくらい低かった。
「そうね。変な意味で色々裏切ってくれるわねぇ。未来って言ったらもっと……こう……レーザーがビーって張り巡らされて見回りロボットが徘徊しているイメージだったのよねぇ。これじゃあ、江戸時代の垣根よ……。」
二人は軽々と中へ侵入した。
屋敷には窓がなく廊下と障子のみだった。
障子からは明かりが漏れている。
その障子戸の中からかすかに声がしていた。
「声がするわ。」
「とりあえず、行ってみよう。」
二人は声がしている障子に近づき、影が映らないように廊下の下にしゃがんだ。
声は未来神のものだった。
「俺は……君を守りたいんだ……。」
「何ですか?いきなり。」
未来神のほかにもうひとり誰かいるようだ。
「女の人の声ね。」
「みたいだね。」
二人は小声で確認しあう。
「君は……君だけは絶対死なせない。」
「またその話ですか?戦争とやらが起こって私が死ぬっていう……。本当に縁起でもない事をおっしゃる方。」
「……。大丈夫。俺が……絶対に戦争なんて起こさせやしない。」
「……最近思うのです。私はいなくなった方がよろしいのではないかと。」
「何言ってるんだ!……俺は!」
「わかっていますよ……。でも、あなたとは結ばれてはいけないのです。」
「君は……ウサギの血が流れているから……な。俺は純血の人間とじゃないと結ばれる事はない。でも……俺は……。」
未来神の悲痛な声と悲しそうな女の声が障子から漏れる。
「あなたが私にかまっていたらあなたはダメになります。やはりここで別れるべきなのでは……。」
「結ばれなくてもいい。だから、どこにも行かないでくれ。別れるなんて言わないでくれ。」
「純血の血を絶やしてはいけません。純血は人々の誇りなんですから。」
「……。」
声はそこで途切れた。
「そういう事ね。」
アヤは確信した。
未来神は女が戦争で死んでしまう事を知っていたから女が生きている間、戦争が起きないように歴史を後回しにしているのだ。
「聞いちゃうとさあ……言いにくいよねぇ。歴史をもとに戻せぇなんてさ。」
現代神は複雑な顔をアヤに向けた。
その時、未来神の声がした。
「……誰だ!誰かいるのか!」
障子が思いっきり開く音が響く。
二人はビクッと身体を震わせた。
「うう……見つかった。行くしかないかな。」
現代神は廊下の下からのそりと出た。アヤもそれに続く。
未来神の顔がゆがんだ。
「君たちか……もう、俺に関わらないでくれ。」
「そうはいきません。歴史をもとに戻してくださるまで僕は負けません。」
現代神は未来神を睨みつけた。
「……さっきから気になっていたのだが、となりの娘はなんだ?まさかと思うが……」
未来神が意味深な事を言いかけた時、となりからひょこっとウサギの耳がのぞき、かわいらしい女性が顔をだした。髪の毛は白く、服は色あせた赤いワンピースのようなものを着ていた。
「どうしました?」
「大丈夫だ。先に寝室に行って寝ててくれ。」
「……。はい。」
女はいぶかしげな表情を浮かべたが未来神の言葉に従い、部屋から出て行った。
女の足音が聞こえなくなるまで黙っていた未来神は足音が消えたと同時に話はじめた。
「娘……君を殺せば……あの戦争が……。君だろ?異種っていうのは……。」
「え?」
アヤはさっきと同様に意味不明な言葉をかけられた。
「ごめん……。本当は殺すとか嫌なんだ……だけど……あの沢山の犠牲とあの子を守れるなら俺は……。そもそも、君が無断で時を渡るからいけないんだ。だから時が狂うんだ!」
「な……なに言ってるの?私は、現代神から……」
戸惑っていたアヤに現代神は力強い瞳をして言った。
「君までおかしくならないでよ。アヤには罪なんてないんだから!しっかりして!ここでも未来神が時間を狂わせていたなんて……。現代が狂うわけだ。」
未来神は拳銃を取り出した。
「!」
高速で弾丸がアヤの髪を通り過ぎて行った。
「くそ……手が震える……俺は的なんて外した事ないのに!」
アヤは未来神が拳銃を撃った事にようやく気がついた。
なに?私……また……殺されそう……
逃げなきゃ……
現代神はさっきの銃声に驚き腰を抜かしてしまっている。
「何やってんの!殺されるわよ!逃げなきゃ!」
「う……うん!」
アヤは無理やり現代神を起こすと庭を駆けだした。
後から何発も弾丸が飛んでくる。
背中からも顔からも冷や汗がつたう。
壁までこんなに遠かったっけ?
全然たどりつけない!
アヤと現代神は必死で走った。
未来神が追ってきている足音と「侵入者!」と叫ぶ声が響く。
急に目の前が暗くなった。
「何!」
見ると先程の門番が武器を構えて壁の前に立っている。
門番は容赦なく斧のような武器を振り回し、爪で薙ぎ払う。
アヤは素早くそれを避ける。
なんで避けられたのかは疑問だがこう必死だと人間、不思議な力が出るようだ。
他にもあちらこちらから武器を持った獣人が現れたが、なんとか獣人達の攻撃に耐え必死で駆けた。
自分にこんな運動神経があるなんて知らなかった。
武器がのろくみえて避けるのは楽だった。
もしかしたら現代神がなにかしたのかもしれない。
しかし、アヤには現代神にそれを確認する余裕はなかった。
とりあえず、壁は獣人にふさがれてしまっているので門の方へ駆けた。
前を見ると先程の門が目に映った。
もうすぐ!もうすぐでこの屋敷を出られる!
門を駆け抜けた時、ほっとしたのと同時に体に痛みが走った。
背中と肩先、足から血が出ていた。
必死で避けていた時に斬られたらしい。
一度痛みを知ってしまうと痛くてたまらない。
「げ……現代神……私……もう歩けない……。」
「アヤ……ごめん。僕がついてきてなんてあの時頼んだから……」
「そんな事言っている場合じゃないでしょ!」
後からは武器を持った獣人と未来神がこちらに向かって走ってきている。
気がつくと斧を持っているツノの生えた男がアヤに斬りかかっていた。
「……。純血様……申し訳ありません。」
ツノの生えた男は苦しそうな顔をして斧を振り下ろした。
「アヤ!」
また現代神が叫んでいた。
だが過去の時みたいに逃げ切る考えはもうない。
死ぬ……
横なぎに斧を振り回している男相手に渡り合える自信などない。
咄嗟に後へ飛んだ。
腹すれすれの所を風が通りすぎる。
服が少し破けた程度だったがバランスを崩した。
やばい!
そう思ったと同時に冷たいものが身体を包む。
間髪をいれず、ドボンっと豪快な音がアヤの耳に入ってきた。
アヤは知らないうちに近くの池に追いやられていて、その池に落ちたのである。
い……息が……できない……
アヤの意識はどんどん遠のいていった。

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