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ごぼうかえるのTOKIの世界!
皆に元気を与えたい! 前向き楽しいブログを目指す(*^.^*) 口蓋裂の娘ちゃんと軽いADHD、軽いチック症状を持つ旦那と楽しくのんびりな日常をドールちゃん達が紹介する! 独自世界の幻想日本神話、自作小説書いています! 神と人形と人間と霊、そして『K』の季節感じる幻想データ世界TOKIの世界へようこそ! 和風SF日本神話の世界です( ´∀`)
かわたれ時…1月光と陽光の姫3
どれだけ経ったかわからないがしばらくしてうっすらとみー君の声が聞こえてきた。そしてなんだか妙に生暖かい風がサキを撫でている。
「おい。朝だぞ。起きな……って。」
みー君のやたらと色っぽい声が耳に張りつく。そして何かがサキの頬をそっと撫でる。
「ん?」
 サキはそっと目を開けた。
 「みー君の声がする。私はそっと目を開けた。」
 みー君がなぜかナレーションのような話し方でぶつぶつと何か言っている。
 ……まったくなにぶつぶつ一人で言っているんだい?
 サキはそう思いながら何回か瞬きをした。焦点の合ってきたサキの目元近くに鬼の面が突然映った。
 「ぎゃあ!」
 サキは目の前に現れた鬼の面を見て思わずお面に向かい、足蹴りをしていた。みー君はサキに覆いかぶさるように座り、サキに顔を近づけていた。しかし、足蹴りにより、みー君は身体を大きくのけ反らせ、サキから離された。
 「おいおい。そこは色っぽく『みー君……ダメ……そんなに顔を近づけたら……』だろ?可愛くねぇな。」
 みー君はのけ反ったまま、つまんなそうに声を発した。
 「まったく!なんなんだい!普通に起こしておくれよ!ていうか痛い!あんた、どんなお面かぶっているんだい?足が折れるかと思ったよ。」
 サキはお面を蹴った右足首を涙目でさすりながらみー君に向かいため息をつく。
 「せっかく乙女ゲームみたいにナレーション付きで甘く起こしてやろうと思ってたんだがな。こんなイケメンが目の前にいるのに何故蹴るんだ……。」
 みー君は残念そうな声でサキを見つめた。
 「あんたねぇ……。だいたい、そのお面見たら誰でも驚いて蹴るよ。それにイケメンかどうかはお面とらないとわからないし、乙女ゲーム自体を知っているあんたが気持ち悪いわっ!」
 乙女ゲームとは女性向けの恋愛シュミレーションゲームだ。色々なタイプが設定されているが一緒なのは全員イケメンという事だ。
 「ああ、あのゲームをやった時はなぜか鳥肌が止まらなかったな。しばらく熱心にやっていたがふと気がついたんだ。俺はなんで鳥肌を立てながら男キャラを必死で落としているんだとな。スチル集めから隠しルートやらコンプしてから気がついた。ギャルゲーもためしたがやっぱり俺はリマオに戻ってきた。」
 なぜか誇らしげにみー君は語る。
 「は、はあ……そうかい。何言っているのかいまいちよくわからないけど……太陽には着いたのかい?」
 サキは戸惑いながらみー君に目線を向ける。
 「いや、着いていない。」
 「じゃあ、なんで起こしたんだい?」
 サキの心にどんよりと不安が広がっていく。
 「実は何かしらの敵襲にあって現在、術にハマっているのだ。」
 みー君は声のトーンを変えずに平然としゃべる。
 「て、敵襲だって?あんた、何してたんだい?起きていたんだろう?」
 「術にハマる寸前、高速で動いていたリマオをいきなり止めるわけには行かず、クリアしてからなんとかしようと思っていたができんかった。」
 みー君の呑気な発言にサキは思い切りズッコケた。つまり、何者かの術にハマりつつあることを知りながらリマオの調子がいいのでゲームを中断できず、最後までやってしまったという事だ。
 「ふざけている場合じゃないよ!何が甘く起こしてやろうだよ!何やっているんだい。まったく。」
 「何と言うか、もう術にハマったから別にいいかと思い、ちょっとやってみたかった起こし方を実践してみたというわけだ。現実だとああなるのか。はっはっは!」
 何の術だか知らないが敵の術にハマっているというのにみー君はとても楽しそうだ。サキは正反対の気持ちだ。
 ……この男といたら命がいくつあっても足りないよ……。とりあえず、この駕籠から出て……
 サキは素早く駕籠から降りた。
 「おい。駕籠に足引っ掛けないように気をつけて降りろよ。」
 呑気なみー君の言葉を無視し、サキは外の様子を伺った。外は雪が降り積もっており、どこだかよくわからないが森の中のようだ。不思議と寒くはない。そして空を飛んでいたはずだが駕籠は地面に無残に落とされていた。鶴はいない。
 ……という事はこの駕籠は突然、鶴達から切り離され、ここに落下したって事だね。ああ、あたしもなんで落ちている事に気がつかずに寝ていたんだい……。
 サキはみー君の事を言える立場ではない事に気がつき、ため息をついた。
 「!」
 サキがため息をついた刹那、みー君に手を引っ張られ駕籠の中へ押し込まれた。
 「へっ?何するんだい!びっくりしたじゃないかいっ!」
 サキがみー君に向かい叫んだ時、先程までサキが顔を出していた場所に大きな衝撃が走った。
 「おわあっ!」
 駕籠は大きくバランスを崩し、吹っ飛ばされた。サキ達が籠っていた駕籠は風圧でゴロゴロと転がり、やがて一つの木にぶつかり止まった。
 「危ないぞ。」
 ひっくり返っているみー君が呑気に言葉を発した。
 「ななな……なんだい?今のは!」
 サキは目を丸くしながらみー君を見つめる。
 「ん?ああ、お前、そういえば猫みたいな目をしてるな。猫目だ。驚くとさらに猫みたいだ。はっはっは!」
 「笑っている場合じゃないんだよ!猫でもなんでもいいから状況を教えておくれよ!」
 笑っているみー君のお面を突きながらサキは声を上げた。
 「状況?俺にはわからないな。とりあえず外に出てみるか?外には敵がうじゃうじゃ。装備は大丈夫かい?勇者よ。こんぼうとなべのふたの装備じゃ死ぬぜ。」
 「誰が勇者だい!ふざけてないでさっさと行くよ!」
 サキは能天気なみー君を引っ張り駕籠の外へ出る。
 「俺は勇者パーティの魔法使いでもやるか。生き返らせる呪文は持ってないぞ。」
 「うるさいねぇ!あんたは!今は緊迫したムードなんだよ!少しはまわりに気を配って……。」
 サキが声を荒げた時、みー君がサキの手を引き高く空を飛んだ。刹那、駕籠は爆発を起こした。
 爆風がサキ達を襲ったがみー君が空を飛んでいるため、飛ばされるほどの風ではなかった。
 「なるほど。姿を現すとなんかが攻撃してくるのか。」
 みー君はスタッと地面に着地した。サキも後を追って着地する。
 「おお……。頼もしいのかなんなのかよくわからないよ。」
 「とりあえず、勇者の剣を見せてくれないか?」
 みー君が目を輝かせながらサキを見つめた。サキは太陽神ならではの能力で太陽エネルギーを凝縮した剣を出す事ができる。サキはこれからの事を思い、ほぼ炎でできている剣を手の中に出現させた。
 「これかい?出せるけど剣術はまったくできないんだ。」
 「だろうな。持ち方から素人だ。」
 「なんだか腹立つ言い方だねぇ……。」
 サキはだんだんと目が慣れてきて、飛んでくる何かを横に飛んで避けた。なんだかわからないそれは無数に飛んできており、すべてサキとみー君を狙っている。
 サキは目を凝らしてその何かの正体を暴こうと頑張った。避けながら観察している内に原型が見えてきた。
 「……爆弾?」
 何かは絵で描いたような爆弾の形をしていた。子供用のゲームとかでよく見るシンプルな形をした丸い爆弾だ。
 ……絵で描いたかのようだね。得体が知れない。これも術の影響なのかね。
 サキが考察している最中、みー君が爆弾を軽やかに避けながらサキの元まで戻ってきた。
 「俺達はこの見える範囲の場所以外は動けないようだ。完全に外と遮断されている。」
 「まいったね。一体こんな事するのは誰なんだい?……ん?」
 サキがふと横に目を走らせた時、黒い達筆な文字が空間に浮かんでいた。
 「芸術神ライ?サインかこれ?なるほど。なんとなくわかったぞ。ここは絵の中だ。芸術神ライって奴の術の中だ。」
 「芸術神かい……。あいつらは人間の妄想とか心とか心霊の世界、弐の世界を作ったりできるって聞いた事があるよ。芸術神にアイディアを願った人間に自身のアイディアを渡し、お代として信仰心をもらっているって言う……。」
 サキは不安げな顔でみー君を見た。みー君の表情はお面のせいでわからない。
 「じゃあ、ここはなんだかわからん不安定な弐の世界なんだな。絵の中って事はたぶん、これは紙だろ?輝照姫、燃やしてしまえ!」
 「燃やすって火で囲めばいいのかい?ホントに大丈夫かねぇ……。あ、それからあたしはサキでいいよ。」
 サキはそうつぶやくとみー君の言った通り、手から炎を出現させるとあたりを覆った。炎は勢いよくあたりに広がった。
 「暑いな……。しかし、よく燃える。」
 みー君は手でパタパタとあおぎながらまわりを見回す。しばらくすると砂で描いた絵が水で流されるように風景が消えて行った。サキの炎もいつの間にか消えていた。
 気がつくとどこかの神社にいた。
 「?……さっむっ!」
 炎が完全に消えた時、刺すような寒さが二人を襲った。よく見ると雪が降っている。
 「ふむ。現世の神社だな。今年は記録的豪雪らしいぞ。この辺は雪国じゃないから大変だな。」
 みー君は雪を眺めながら一人頷いた。
 「厄災の神に心配されるなんてね……。」
 「ま、なんだかわからないが術から抜けたようだ。もうあの駕籠は使えんな。ボロボロだ。見ろあれ!はっはっは!」
 みー君は楽しそうな声で修復不可能な駕籠を眺めた後、サキに目を向けた。
 「ああ、もうやだよ……。もう、現世なら太陽へ行く門を開いてさっさと帰ろう。」
 サキは大きくため息をついてから歩き出した。
 「ん?どこ行くんだ?」
 「太陽へ行く門を開くには日の神格を持っている神が住む神社でないと門を開けないんだ。」
 「ふーん。なんだかわからないがついてくぜ。」
 サキに続き、みー君も歩き出す。
 「おい。というかこの神社は違うのか?」
 「安産祈願って書いてあるじゃないかい……。ここには日の神はいないよ。」
 サキは何本も立っている旗を指差す。その旗には安産祈願と書いてあった。
 「そうか。じゃあ、ついでだからなんかゲームを買ってもいいか?」
 みー君は声を弾ませてサキに詰め寄ってきた。
 「なんのついでだかわかんないけど、せっかく現世に来たし、あたしも寝間着買いたいしねぇ……。とりあえず寒いから服着替えよう。」
 サキは両手を広げて着物を排除するとショッピング用のオシャレな服に戻った。
 「男の前で着替えるなんてお前、けっこうチャレンジャーだな。」
 「別に裸になるわけじゃないんだからいいじゃないかい。」
 「若さがねぇな。」
 「うっさいねぇ。」
 サキはみー君の言葉を軽く流しながら神社の階段を降りる。
 「!」
 神社の階段を降りている最中だった。突然、また風景が揺らぐ。みー君はサキを抱えると神社の階段から舞うように飛んだ。
 「うわあああっ!」
 みー君は叫ぶサキに耳を塞ぎながら一気に階段を降り、地面に足をつけた。
 「びっくりした。あんた!何やってんだい!危ないじゃないかい!」
 「いやあ、危なかったのは違う方向で危なかったぞ。はっはっは!」
 みー君は楽しそうに笑いながら真っ青なサキを降ろすと神社の階段を指差した。
 「え……?」
 サキの身体からじわりと冷や汗が出てきた。神社の石段は知らぬ間に針の山に変わっていた。
 「串刺しでゲームオーバーになってたなあ。ゲームだとあれだな。この針が出たり引っ込んだりしてタイミング合せて飛んで……」
 「なんであんたは楽しそうなんだい……。もう身が持たないよ……。」
 みー君は針の山に感心しており、サキは単純に生きていた事を喜んだ。
 「ここもあれだ。芸術神の絵らしいなあ。」
 みー君は横にある黒い文字を指差した。
 「また芸術神ライってやつのサインかい……。一体何の嫌がらせなんだい。これは!」
 サキはイライラしながら先程と同様、周りに火を放った。
 「おお。今回はいきなりやるんだな。もっと探索してからのが面白いと思うぞ。」
 「いんや、もういい。あたしは疲れた。」
 サキはさらに炎を増やす。どんどん熱が上がっていき、あたりは蒸し風呂状態になっていた。
 「暑い……。おかしいな。風景が消えない。」
 みー君は手でパタパタとあおぎながらあたりを見回している。
 「確かにおかしい。どんどん暑くなっていくだけだね。なんか対策でも立てたのかね……。」
 サキは頬に垂れる汗をぬぐいながら激しさを増す炎をじっと凝視していた。
 「今度は紙じゃねぇな。熱がこもっているって事は鉄とか石とかなんかに絵を描きやがったな。」
 「なるほどね。そう言う可能性もあるのかい。いったん炎を消すよ。」
 サキは一瞬で炎を消して見せた。徐々に温度が下がっていき、しばらくすると元の寒さに戻った。
 「とりあえず出られる場所を探すか。……ん?」
 みー君は上から飛んでくる何かに気がついた。とりあえずサキを抱え、走り出す。
 「またなんかあったのかい?」
 サキがみー君に抱えられながらつぶやいた。
 「ん?わからん。」
 みー君が走り出した場所から狙いを定めるように何かが爆発した。狙いを定められているらしくみー君は足を止める事ができない。止まったところで爆発物が命中するからだ。何が飛んできているのかはわからない。
 「あんた、けっこう反射神経とか凄いんだねぇ。走るのも速いし。」
 「見直したか?おおっと。」
 みー君は大きく空を飛んだ。目の前に大きな落とし穴があり、その落とし穴の中から針が覗いていた。
 「ひぃ……。あ、あんたが頼りだよ……!ほんと頼りにしているよ!」
 サキは顔を強張らせながらみー君を見上げた。
 「おお!リマオだ!俺はリマオだ!ははっ!最上級のスリルだ!」
 サキとは正反対にみー君はとても楽しそうだった。落とし穴がみー君の心に火をつけてしまったようだ。
 ……ワイズ……確かに彼はやり手だが……これは嫌がらせにしか思えないよ……。
 サキはため息をつきながらこの状況をどうするか必死に考えていた。
 「というか、なんでお姫様ダッコなんだい?せっかく助けてもらっているしどう持たれても文句言わないよ。」
 サキはだんだん慣れてきた爆発の音を聞き流しながらみー君を見上げる。
 「お前は姫だ。姫になれ!俺はリマオだーっ!」
 ……ダメだこりゃ……。しかし、いい感じの乗り物だねぇ。これは。
 一人で燃えているみー君にサキはもうつっこむ気も起きなかった。サキは飛んだり、避けたり忙しいみー君の邪魔にならないようにあたりを見回した。みー君は一直線にしか進んでいない。おそらく一直線にしか動けないのだ。しかし、さっきとは違い、やたらと動ける範囲は広い。
 術の範囲は描くものによって違うらしい。先程は紙。サキ達は画用紙くらいの大きさの紙の中に閉じ込められていたと推測される。そして今は横長の石か、燃えない物の中にサキ達は閉じ込められている。おそらくここも弐の世界。弐の世界は生物が寝ている時に行く心の世界だったり、心霊が住む世界だったりと様々だ。それぞれ違い、変動する。世界も沢山あり、不確定要素が強い。想像力や夢に関わっている神は弐の世界を作ってしまう事もできるらしい。
 「問題はどうやって出るか。」
 サキが出られそうな場所を探していると一カ所、違和感を覚える所があった。周りの風景はみー君が走っている一本道に沿って絵で描いたような木が並んでいる。その木の一本に亀裂が入っていた。
 「みー君、ちょっと戻ってもらえるかい?一カ所、おかしな木を見つけたんだ。」
 「戻る?難易度が高けぇな……。なんか隠しルートでも見つけたか?」
 みー君は相変わらずハヤブサの如く爆弾を避け、落とし穴を避けてまっすぐ進んでいる。
 「いいから、ちょっと戻るんだよ。ゲーマー。」
 「そんな簡単に言うな。だいたいこういうのは難しいんだからな。」
 みー君は一瞬止まると振り向き、逆走を始めた。サキは若干祈る気持ちでみー君にすべてを任せた。いままで後ろから襲ってきた爆弾は今度前から襲う事になる。爆弾には追尾機能がついており、真っ向から対峙すると避けるのは難しい。先程、みー君が軽く通り過ぎた落とし穴も場所を覚えていないと落ちてしまう。
 「みー君。頑張っておくれよ。」
 サキは不安げな顔でみー君を見上げた。みー君はちらりとサキを視界に入れるともう一度しっかり抱きなおした。
 「そんな顔されちゃあ、なんか燃えるぜ。」
 みー君の心にさらに火がついた。
 ……ふう。なんとなくこの男の扱いがわかってきたような気がするよ。今は彼が頼りだから頑張ってもらわないと。
 サキは前から飛んでくる爆弾に目をそむけながらみー君を心で応援した。
 「ここが落とし穴だ!ここで右から来る爆弾を避けて左に着地。ここで左から槍が飛んでくるから素早く飛び、着地。すぐに前から飛んでくる爆弾をしゃがんでかわす。」
 みー君は驚く事に爆弾が飛んでくる位置まで覚えていた。ゲーマーの能力か、長年生きた経験かわからないがサキは褒め称えたい気持ちでいっぱいだった。
 「す、すごい。すごいよ!みー君!」
 気がつくと先程サキが気になっていた木の近くにいた。
 「で、どこなんだ?」
 「もうちょっと先だよ。」
 みー君はさらに戻った。すると、木の亀裂は先程よりも大きくなっており、その亀裂の隙間から何者かの手がにょっと出ていた。
 「お?なんか手が出ているぞ。気持ちわりぃなあ……。」
 みー君は警戒しながら手が出ている亀裂に近づいて行った。
 「サキ様―!御柱様―!」
 亀裂の向こう側で若そうな男の声が聞こえてきた。
 「誰だい?」
 サキは亀裂に向かい声を上げた。
 「その声はサキ様?今助けます!」
 亀裂から出ている手から突然、大きな刀が出現した。亀裂の隙間を器用に使い、手の持ち主が刀を振るった。
 「!」
 刹那、石のようなものが飛び散り、風景は溶けるように消えた。
 「なんだ……?」
 風景は完全に消え失せ、石の壁で覆われているトンネルの中にサキ達は立っていた。
 石のトンネルの壁面には長い落書きがしてあった。サキ達はこの中に入り込んでいたらしい。
 「はあ。やっと会えましたね。」
 サキ達は声が聞こえた方を向いた。目の前に若い男が立っていた。緑の作務衣を着ており、髪はボサボサだ。目はくりくりとしており、どこかかわいらしい感じがある。
 「お前なんだァ?まさか芸術神ライかぁ!」
 みー君は冷めきらない頭で叫んだ。何故だか気持ちが上がっているようだ。
……なんだかみー君、いつの間に熱い男に変わったね……。
 「みー君、たぶん違うよ。」
 サキはみー君を元に戻そうと声を上げる。その後、付け加えるように男がしゃべりだした。
 「オレは芸術神じゃないですよ。あなた様達がこの石の絵の中に入り込んでしまったんで刀で絵を傷つけて助けるつもりだったんです。」
 男はにこりと微笑むとボサボサの頭をかいた。
 「そうか。刀で石を斬れば今度は良かったのか。炎で焼き尽くせなかったわけだ。で?お前は?」
 みー君の高ぶりがだんだんと戻ってきたらしい。声のトーンが一定になってきた。
 「ああ、オレは剣王から派遣された助っ人です。お話はいってますよね?まだ、神になって間もなくて、名前をもらっていません。お好きに呼んでください。」
 サキは剣王からの言葉を思い出した。後で太陽に派遣しておくからとかなんとか言っていた修行中の神だ。
 「あんた、よく急に消えたあたしらを見つけられたねぇ。」
 「鶴達が騒いでいるのを見つけてそこから気配を追いました。そしたらこの現世の石トンネルにあたったんです。」
 男は礼儀正しくサキに答える。好感を持ったサキは男に微笑んだ。
 「なるほどね。あんたのおかげで助かったよ。」
 「そんなお褒めの言葉をいただくなんて……オレ、最高です!」
 「あんた、なんだかかわいいねぇ。」
 「かわいいだなんてそんな……っ!滅相もない!」
 サキはなんだかこの男を見ていると癒された。サキとは逆にみー君は不機嫌そうに男を見ていた。
 「ああ、なんか鬱陶しいな。」
 「鬱陶しいなんて滅相もない!」
 「いやいや……。」
 男の反応でみー君も戸惑っていた。この若い男は偉い神二人に会った事で頭があまり回転していないようだ。
 「名がないって呼び名に困るねぇ。じゃあ、あたしが決めてあげよう。チイちゃんなんてどうだい?」
 「おいおい。どっからきたんだよ。その名前……。」
 笑顔のサキを横目で見ながらみー君がつぶやいた。
 「チイちゃん!素敵なあだ名をありがとうございます!」
 「おいおい。そんなあだ名でいいのか。」
 男はやたらと嬉しそうだ。みー君はふうとため息をつく。
 「よし、じゃあ、とりあえず太陽に行く感じでいいかい?みー君、そしてチイちゃん。」
 サキは良い気持ちでみー君とチイちゃんを交互に眺めた。
 「なんだかお前の飼い犬みてぇになったな……。別にいいが。」
 みー君はぽりぽりと頭をかいた。
 「あははは!予想以上に面白かったわ。」
 「?」
 話が一通り終わったのを見計らったかのように甲高い女の子の声が響いた。サキ達は声の主を探したが見つからなかった。
 「どこにいるんだい?ていうか誰だい?」
 「私は芸術神ライよ。主に絵を極める芸術神。絵は奥が深い。線で正確にラインをとったりとかわざとアバウトにとったりとかねっ!色もいっぱい。影のつけ方もただの黒じゃないしね。」
 サキが質問した刹那、目の前に金髪の女の子が現れた。金髪の女の子はボンボンのついているかわいらしい帽子をかぶっており、茶色のジャケットに蒼と水色のしましまのシャツを着ている。
下はキュロットスカートに黒のストッキングだ。金色の短髪を揺らしながら芸術神ライは微笑んだ。目は丸く、可愛らしい顔つきをしている。歳はサキと同じくらいか。おそらく十六、七だろう。
 「あんたが芸術神ライねぇ……。なんであたしらに嫌がらせをするんだい?」
 サキはあまり挑発しないように言葉を選び話しかける。
 「うーん。あれよ。芸術だわ!」
 ……もうダメだ……。わからない。会話になってないじゃないかい……。
 だがサキはこの質問で芸術神ライとやらが何かを隠している事に気がついた。
 「お前がラスボスか。」
 「ラスボス?何を言っているのかわからないけどとりあえず……ね?」
 みー君の言葉に一応答えたライは突然、絵筆を空中に走らせた。
 「なんだい?」
 サキが目を細めた時、ライの絵筆から大岩が多数、サキ達に飛んで行った。
 「?」
 サキとチイちゃんは咄嗟に行動ができず、ただ立ち止っていた。素早く動いたのはみー君だ。
 みー君は手からカマイタチを放ち、大岩を次々と破壊していく。しかし、大岩があまりにも多すぎてみー君一人では対処しきれず、みー君の顔面に大岩が当たった。
 「ちっ……。」
 「みー君!」
 低く呻いたみー君を横目で見ながらサキもやっと動き出した。サキは軽々と炎で岩を斬っていく。反対にチイちゃんは危なげに刀で大岩を破壊している。
 大岩をすべて破壊した後、サキとチイちゃんは顔を押さえているみー君の側へ慌てて近寄った。
 「ちょっと!大丈夫かい?どっか怪我したんじゃないかい?ねぇ?」
 「みー様……。すみません。オレが動かなかったせいで……。」
 サキとチイちゃんは不安げな顔でみー君の様子をうかがう。みー君の顔からお面の破片がパラパラと落ちていた。
 「あーあー、けっこう気に入ってたんだがなー……。」
 みー君は痛がるそぶりも見せずにサキ達の方を向き、顔に当てていた手をそっとどけた。
 「!」
 みー君のお面は半壊しており、そこから鋭い瞳が覗いていた。よく見ると端整な顔立ちをしている。
 「あんた、けっこうカッコいいじゃないかい!なんでお面なんてしているんだい?なんか色々もったいないよ。ていうか、そのお面、どんだけ固いんだよ!あんなに直撃だったのに半壊とか。」
 サキは初めて見たみー君の素顔に謎の感動を覚えていた。
 「お前、テンション高けぇな……。」
 「みー様の素顔……初めて拝見いたしました!墓場まで持っていくつもりです!」
 「お前はなんでテンションが高けぇんだよ。気持ち悪いぞ。」
 みー君はなぜか興奮しているチイちゃんに呆れた。それを眺めながらライはニコリと笑った。
 「なるほど。みー君が一番厄介そう。まずみー君を倒すわ!覚悟!みー君!」
 「お前もみー君、みー君言うな!敵なのに慣れ慣れしいんだよ。」
 みー君は不機嫌そうな顔でライを睨む。
 「なんか狙いがみー君に行ったみたいだね。」
 「少し端の方で安全をキープしましょう。サキ様に怪我があってはなりません。そしてオレはみー様の勇姿をこの目で見たいです。」
 「そうかい。じゃあ、ちょっと端に寄るかい?」
 サキはため息をつきながら目を輝かせているチイちゃんを引っ張り、石の壁の方へ寄る。
 「なんか、ずいぶんゆるいんだね……。」
 ライは頬をぽりぽりとかきながらはにかんだ。
 「なんだ?俺とお前で一騎打ちか?あれだな。銀拳だな!銀拳!」
 みー君の声がまた弾んでいる。今回は顔が見えるので楽しそうに笑うみー君を見る事ができた。
 「銀拳ってあれですね!ゲームセンターにある格闘ゲーム!」
 チイちゃんは完全に応援ムードに入っている。
 「俺は熊猫Gで勝負だ!」
 何の会話をしているのかまったくわからないがみー君は楽しそうだ。
 「もう……なんでこう、緊迫したムードがないんだい?このテンション、もう疲れたよ。」
 サキは壁に背をつけながら頭を抱えた。
 「なんかよくわからないけど本気で芸術しちゃうわよ。」
 ライもペースを崩され戸惑いながら筋骨隆々の空手着を着た男性を筆で描き、出現させた。
 「おう!来い!」
 また感情が高ぶっているみー君は出現した男を睨みつけながらファイティングポーズをとる。
 みー君は男が繰り出す拳を軽やかに避け、反撃のタイミングを計っていた。男は蹴りや拳を見えないくらいの速さで打ち込んでいる。それをみー君がどうやって避けているのかはわからないがなかなか能力の高い神のようだ。
 ……一体、何をしたらこんな神になるんだい?
 サキは戦いの風圧をその身に受けながら不思議そうに首をかしげた。隣でチイちゃんは目を輝かせてときどき大きく頷いている。
 みー君に対する憧れかなんなのか知らないがチイちゃんは運動会のバトンリレー並みに応援していた。かなりうるさい。
 「!」
 みー君が素早く足払いを男にかける。男がバランスを崩した。そのままみー君は右足を風に乗せ、男の脇腹を蹴り飛ばした。男は衝撃波と共に吹っ飛ばされ、石壁に思い切り当たり、消えた。
 「……あんたはどんな脚力してるんだい。まったく。」
 「サキ様、あれはみー様特有の台風を起こす力を凝縮して右足に集中させることによって放たれる一撃ですよ。」
 驚いているサキに興奮気味にチイちゃんは語った。
 ……なんかどっかの少年漫画とかにいそうな起こった事を説明してくれる奴みたいだね。この子は……。
 サキが呆れた目でチイちゃんを見た。
 「さてと。」
 「え?え?なに……?やめて……。」
 みー君は手をバキバキ鳴らしながらライに近づいていく。ライはまさか男が倒されると思わなかったようで戸惑って泣きそうな顔になっている。
 「ちょっと、みー君!暴力はダメだよ!」
 サキが慌てて叫んだ。みー君がライの前で足を止め、にやりと笑った。
 「ゲームは男女平等だぜ?」
 みー君は拳をビュッと怯えているライに向けて繰り出した。
 「ひっ!」
 ライは小さく叫び目を閉じた。
 「なんてな。はっはっは!」
 みー君の拳はライの額スレスレで止まっていた。
 「ほえ……?」
 てっきり殴られると思っていたライはヘナヘナとその場に座り込み、わんわん泣き出した。
 「あ、あれ?なんで泣くんだ?」
 「みー君……ああ、びっくりしたよ。そんな事する奴じゃないとは思っていたけどねぇ。」
 きょとんとしているみー君にサキはほっと胸をなでおろした。
 「ゲームはゲームだ。リアルでは俺は紳士なんだ。こんなに怯えられて泣かれたら違うゲームのスイッチが入っちまう。なんというかこの娘を攻略したくなる。」
 みー君は泣かれた事にかなり戸惑っているようだ。自分で何を言っているのかよくわかっていない。
 いじめるつもりはなくただの冗談のつもりだった。冗談だったのだが大泣きされてしまい、みー君は戸惑う事しかできなくなってしまったという事だ。
 「私をこうりゃく?」
 ライはめそめそと泣いていたがみー君のある一言でそっと顔を上げた。
 「えー……まあ……あれだ。そのごめんな。」
 「こうりゃく……。」
 ライはみー君の謝罪を半ば無視し、じっとみー君を見上げている。そして目があったとたん頬を真っ赤に染めた。
 「あれ?えーと……ちょっと待て!なんか勘違いを……。違う!違うぞ!」
 「攻略って私をどうするの?隅々まで触るの?見るの?ちょっと恥ずかしいな……。でも負けちゃったし……しょうがないかな……。」
 ライは頬を真っ赤に染めながら潤んだ瞳でみー君を見上げていた。
 「へっ?待て待て!触るってなんだ?お前は……な、何を言ってるんだ……。」
 みー君は戸惑いつつ、困った顔をサキ達に向ける。
 「あーあ……。失言だね。いきなりお前を攻略してやるなんて言われたら変な想像するのはわかっていた事じゃないか。」
 「新手の女性を落とすテクニックですか!さすがです!みー様!」
 「あんたはちょっと何と言うか気持ち悪いよ。」
 よくわからないが感動しているチイちゃんにサキは呆れながらつぶやいた。
 「俺はそんなつもりじゃなくてだな……。べ、別に変な事を望んでいるわけではなくてだな……。ああ、ダンジョンに入って宝箱を見つけたい……。」
 みー君の戸惑いがいよいよひどくなってきたのでサキは助け舟を出す事にした。
 「あんた、なんで嫌がらせをしたんだい?根は性悪じゃないだろう?」
 サキはライに違う方面での言葉を投げる。
 「私は芸術をひたすら求めているの。だから、彼氏がいないの。さみしい。」
 「あの……悪いんだけどちょっと男から離れてくれるかい?」
 サキはしくしく泣いているライに同情しつつ本題を引き出す。
 「で、なんの話してたっけ?」
 ライは涙をふくと再びサキを見つめた。
 「なんで嫌がらせしたのかを聞きたいんだよ。」
 「ああ、旧友、月子の頼み。あなた達が凶悪で月子の邪魔ばかりするから少し懲らしめてって言われた。でもなんかゆるいし呑気だし……優しいし……ああ、もう、私わからない!わからないわ!あなた達、何なのよぅ!うえええん。」
 月子とは現在月光の宮を取り仕切っている月神トップのあだ名だ。本当は月照明神という名の神だが本人が月子さんと呼べとまわりに強要している。少し変わった神様だ。
 ライは不安が爆発したのかさらに泣きはじめた。ライの泣き声にチイちゃんとみー君は戸惑い、オドオドと謎の踊りをしている。
 「あたし達は今、その月子の様子を見に行こうとしている所だよ。いいかい。よく聞いておくれ。今、月が大変な事になっているらしいんだ。月子が何かの事件に巻き込まれたかもしれないからそれを調査して助けようとあたし達はしている。」
 「それは本当なの?じゃあ、月子が言っていた事は?なんなの?嘘?」
 「それはわからないよ。少なくともあたしらは月子を助けようと動いている。別に凶悪じゃないよ。」
 サキの一言を聞いてライは安心したらしい。おそらく月子のため必死でサキ達の邪魔をしようとしたようだ。月子が言っていた事は気になるが今、この状況はおさまった。
 とりあえず一同は太陽には帰らず、直接月に行く事にした。
 

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